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苦悩するオープンソースコミュ運営(2)

前回「苦悩するオープンソースコミュ運営」をテーマにしたが,日本でまともなコミュニティ運営がなされているオープンソースは,実は数えるほどしかないのではないか。他のオープンソースのリーダやコア開発者から,オープンソースのイベント等での雑談で直接聞いた中では,ほとんどの団体で,「えっ!」と驚くような運営実体だった。

もちろんうまくいっている団体もある。

Ruby関西は毎月勉強会が開かれているそうで,いつも盛り上がってセミナーも大盛況だが,それはオープンソース自体に魅力があって,しかも運営者の努力とあいまって盛り上がっているように思う。Geeklogもセミナーやオフ会を頻繁に開いて,コア開発者が各種CMSに関わりつつもGeeklogを選んで大変な開発協力をしてコミュニティが盛り上がっている。素材の良さと運営の努力双方があわさって,理想的なコミュニティ運営になる。

重要なのは,盛り上がっている団体というのは,オープンソース自体の良さ,運営努力,この2つが両方ともうまくいっている団体だということだ。

オープンソース自体の良さだけではただ良いように使われるだけでフィードバックが疎かになる。コミュニティとしての動きができない。

一方,運営努力だけでは良い開発者が集まらない。良い開発者というのは, 同類のCMSをよく知っていながら,そのオープンソースを選んで積極的に貢献しようとする開発者だ。もし他のCMSを知って,そちらが良いと思ったら,いとも簡単に歯抜けのようにそちらへ流れていくはずだ。

オープンソースのコミュニティは,コミュニティを軸に,サポートしあったり,オープンソースソフトウェアの開発を共同で行っていく。そうやって情報共有し,情報公開してGPLの精神,オープンソースの精神をみんなで共有して助け合いネットワークを構築していくことだと思う。

そういう性質のコミュニティにおいて,中心になるオープンソースのリーダは非常に重要な役目を背負っている。全体の動きを把握して対外的にどう動くのか,主に,どのイベントに出展してセミナーを開催するのか,本をだれが執筆するのか,いつオフ会を開くのか,さらに,コミュニティの理念を共有していけるよう配慮しながらコミュニティを運営していく。自ら直接動く必要はないが,目配りだけは全方向に向いて,それぞれの方向付けをして,必要なときには軌道修正していかなければならないだろう。

技術力が突出してオープンソースに中心的に関わる場合は特に,リーダとしての立場を自覚してコミュニケーション能力を最大限に高めてネットワークを築き,良好なコミュニティ運営をすることを努力する必要があるのではないか。

また,オープンソースの場合,中心にいた開発者がボランティアで行っていたリーダの仕事を半ば放棄して仕事に専念する場合も少なくない。 しっかりと後継者を決めたうえで引退することだ。リーダにその実行力がないのなら,セカンドの人材がコンセンサスを得て引き継ぐことだ。

本家が英語で開発したオープンソースの場合,共通して言語の壁がある。これはプログラムの問題に留まらない。本家が英語圏にある場合には,プログラム内に言語ファイルが多数仕込まれていて多言語化が難しくなる傾向がある。ドイツなど,ヨーロッパ圏から配布されている場合には比較的言語が切り分けられているので安全だ。

さらに,本家における開発と日本における開発の歩調をどう合わせるか,これは英語によるコミュニケーション能力になるわけだが,日本のコミュニティに英語と開発両方の達人がどうしても必要になる。英語の能力,説明能力自体に自信が持てないのでどうしても躊躇してしまいがちだ。もちろん,わたしも含めて英語が苦手な開発者も本家の掲示板には書き込みをしたり,言語ファイルの提供など,精一杯フィードバックしているが,他の開発者と異なる意見の場合に説得していく技術が必要だ。このような場合,英語も説明能力も開発も達者なメンバーに頼ることになる。本家が主催している英語の開発者メーリングリストの量は半端ではなく,それらの情報を日本のメンバーにつたえたり,そこで日本のメンバーたちの考えを発言してフィードバックしていく。

こうやってできうる限りのフィードバックを行うことにより,本家とさらに良好な関係を築くことができる。翻訳を含め,卓越した人材が必須だ。

また,デザインのセンスは英語圏と日本語圏ではかなり違う。英語圏でのデザインをそのまま日本語圏で適用するだけでは本当に日本語化したとは言えないだろう。そこで必要になるのがデザイナーの参加だ。

つまり,コミュニティには,様々な層からできる限り多くの開発に協力してくれるユーザが必要なのだ。

その貴重なユーザを集める努力,そのユーザの声を満遍なく聞き取って意見調整してコミュニティを維持し,コミュニティを割れさせたりすることのないように調整する能力が,オープンソースのリーダに課せられているのではないか。

しかしながら,そういったリーダの役割の認識は,現在ほとんどコンセンサスが取れているとは言えないようだ。

いったいどんなオープンソースがあって,それぞれのコミュニティがどういう動きをしているのか,中心となって積極的に情報を集め,オープンソースの運営に協力しようとする動きがまだまだ鈍いように思う。

そういう動きを期待したいのは,たとえばNPO法人であるオープンソースソフトウェア協会だったりするのかもしれない。オープンソースソフトウェア協会では最近ではGPLセミナーなどよくセミナーが開かれており,リーダ同士で情報を交換するのに最適だ。

オープンソースソフトウェア協会にはGeeklogやOpenPNEなど,オープンソースのリーダが参加し始めており,Geeklogとはお互いに協賛団体として連携することになった。

そういう動きがさらに広がることを期待したい。