苦悩するオープンソースコミュ運営

  • 2007/11/11 23:51 JST

Geeklogの日本ユーザ会であるGeeklog Japaneseは,コア開発者の複数体制にはじまり,SNS 800名体制で,セミナー・ブース出展協力など万全だ。このように,オープンソースの運営には,できるだけ多くの利用者を巻き込み,その中から開発者・協力者を見出して連携をとっていくのが理想的だし,他でもそれをやっているものだと思っていた。

だが,オープンソース自体がボランティアで技術者がそれぞれの思いで関わることとなるので,グループ運営のリーダーシップを取らない,あるいは自然発生に任せて,もっぱら開発に専念してしまっている,あるいは主要開発者が興味を失うか次第にコミュから離れた後,だれが引き継いでリーダシップをとるのか遠慮しあって運営が行えていないところ等など,必ずしも順調に運営できているとは言えない様だ。

だれが本を執筆するのか,だれがイベントに出展するのか,だれがセミナーを開催するのかがなかなかコンセンサスが取れず,コミュニティとして動けない場合も少なくない。

だれもが知っている巨大オープンソースなのに日本でたった20人とか,たくさんのユーザがいるはずなのに開発者1人で日本語化を行っているとか,各々オープンソースコミュの運営自体,スタートラインに立てているとはなかなか言いづらい状況もあるようだ。

また,オープンソースの場合,英語版は本家から配布されて,それはかなりの確率でドイツのようなのだが,そのオープンソースは,日本語化作業や携帯への対応など,日本ならではの開発を行って配布する。そのため本家とどう良好な協力体制をとるかは実は非常に大切なのだ。が,オープンソースによっては, ロゴ利用の規制にはじまり,様々な場面で本家から制限を受けて,自由に動けないものも少なくない。

マルチバイトへの対応も,本家の開発者グループがどこまで対応してくれるのかもネックだが。

オープンソースをユーザに紹介する場も限られており,現在は企業のある一部門のオープンソースへの貢献事業というかたちで無償でブース出展が可能になっているが,十分とは言えない。(参考:オープンソースを支えるコミュニティ活動(イベント編))

オープンソースがこれからの日本の産業に大きな影響を与えることは明白なので,国の事業として考えても良いくらいなのに,個々の企業が自主的に行っている数々のイベントに国が直接なんのサポートも行っている形跡がない。

国が主体となって,個人のボランティアや企業の善意にたよりがちなオープンソース活動をもっと側面支援してほしい。

支援する方法としては,オープンソースを発表する場の提供だ。

特定企業だけに頼ることなく,こころおきなく,ネット環境がそろった環境で思い思いにオープンソースを展示・発表していきたいものだ。

そうして国ももっとオープンソースを利用していくことで費用対効果をあげていける。

オープンソースを使うことにより無駄に重複してソフトウェアを開発しなくて済むことになるので,多くの国に頼った既存企業は倒れていくことになるかもしれないが,そこに囲い込まれていた優秀な開発者を救い出すことにもなるかもしれない。

そうして,無駄な開発を必要な開発へと集中させて,日本の技術力をオープンソースで結集し,SOHOのワーキングスタイルをも推進させることにより,ライフスタイルを改善して住みやすい日本に移行して世界と技術で貢献し,連携していける社会を築けるのではないか。

[みんなの回答]開発者とうつ

  • 2007/11/09 03:29 JST

わたしには高校3年で今年大学を受験する長男がいるが,理系に進むものの,情報処理系統を受けないことに実は内心ほっとしている。

コンピュータ開発は,非常に最先端で高度な技術が要求されながら,サービス業であり,最先端で働くもっとも優秀な開発者は20代から30代前半なので,会社組織としては下位層にある。賃金もたいていの場合,なにもできない上司よりずっと生産性の高い開発者のほうが低い。多くのライバルと社内で静かな闘争を繰り広げながら,弱音を吐けない民間企業の彼らの立場は危うい。弱音を吐けば,退職を示唆されても仕方がないくらい会社もゆとりを持てない。派遣の開発者たちはさらに危うい。

仕事がわからない現役を疾うに過ぎた上司たちは,クライアント企業から仕事をもらうわけだが,たいていは十分な受注額にならず ,しわ寄せはすべて,最も優秀な末端開発者だ。

さらに悪いことに,優秀な開発者には,その能力ゆえにさらに多くの仕事が回ってくる。

責任感が強く,生真面目でよく気がつく優秀な開発者が長時間労働のため太陽をまともに浴びれない生活を永年送れば,うつにならない方がおかしい。

うつになっても,本人は気がつかず,まわりの人間も徐々に状態が変化するので見逃して,さらに事態は深刻になる。

気がついても,厳しい経営環境であれば,相談したら真っ先に移動など,意にそぐわない仕事がまわるか,かるく肩をたたかれてしまうかだ。

うつは, 思いもよらない症状がいろいろおこるので,本人が自覚するのは非常に困難だ。認めなくない気持ちも,生真面目で優秀な開発者ほど大きい。

そんなとき,スパッと社内で移動を希望して自ら環境を変えるか,転職して一切の過去を消して再スタートすることによりある程度解決する。開発者には転職組が多い。

わたしの場合は,勤めていた会社をやめて自らやりたいこと,みんながやってほしいことを模索して起業したことだ。おなじ開発の仕事でも,やらされる仕事と自ら企画してやる仕事とは,ストレスのかかり方はまるで違う。

優秀な開発者は,いずれ起業することを目指して,開発だけではなく様々な部門を経験してできる限りノウハウやネットワークを広げ,同時に自らホームページも開設して,できれば,情報技術を販売するような仕組みを準備し,いつでも退職してSOHOになる道を念頭に,今の仕事にがんばればよい。

そんなとき,オープンソースは大きな武器になるはずなので,十分研究して欲しい。

そうすれば,いつでもやめられるという安心感で,最悪の事態に踏み込むことは少なくなるはずだし,SOHOになってある程度生活ができるのであれば,たとえ収入が減ったとしても,仕事の達成感や生活をたのしむこころ,家族といっしょに生きるたのしみなど,精神面で得るものは大きいはずだ。

オープンソースコミュ運営はSNS活用と共同管理体制で

  • 2007/11/08 18:19 JST

オープンソースのコミュニティ運営は,まだまだメーリングリストが主流のようだ。たしかにお手軽でだれでも参加しやすいので良いのだが,せっかくコンピュータに強い層なのだから,SNSをお互いの意見交換に利用してみてはどうだろうか。

オープンソース活動は,

  1. 開発情報の発信とサポート情報の発信
  2. ドキュメント整備と公開
  3. 開発者間のコミュニケーション

この3つに集約される。したがって,ホームページはこの3つのサイトを用意すればよい。

1の情報発信なら,汎用CMSが最適だ。ブログでもよいのだが,メールマガジンやイベントカレンダ・リンク・記事投稿システムなど機能が充実してしかも機能拡張するしくみがあるので開発者たちが設置しても,自由に開発できるのでストレスが無い。汎用CMSには,JoomlaDrupal,XOOPS Cube,Ploneそしてこのブログで紹介しているGeeklogなど,たくさんのソフトウェアがある。携帯でログインして編集・書き込みまでできるGeeklogは一度機能をデモサイトで試して欲しい。公開サポートとして掲示板プラグインを利用すればよい。詳しくは同ブログのGeeklogが支持される理由を。

2のドキュメント整備と公開は,1の情報発信のサイト内で開設しても良いのだが,ドキュメントをみんなで管理していく機能に優れているWikiを使うのが一番だ。Wikiには,MediaWikiPukiWikiYukiWikiHikiがある。Hiki は Ruby で書かれたWiki クローンとのことで,ちょっとおもしろい展開になってきたので将来たのしみだが,ようやく書籍が出てドキュメントが十分になったMediaWikiはよく使われており,Geeklog Wikiでも活用している。

3 の開発者間のコミュニケーションは,これからはSNSに限る,と思う。メーリングリストでのコミュニケーションよりずっと内容の深い微妙なニュアンスまで伝えられるコミュニケーションができるし,情報整理をみんなで行える。画像や動画などもあつかって,多様なコンテンツをみんなで共有できる。SNSのオープンソースにはOpenPNEがあり,Geeklog.jp SNSでも活用している。

開発者の信頼性をメールよりSNSの方が高められるので,より安心して開発者同士交流できる。オープンソースは非常にたくさんの開発者によって開発されるので,ユーザとしてはそれら多くの開発者全員を信じて使うしかない。悪意のコードが埋め込まれていないことを前提に利用するわけだが,SNSで信頼度の高いコミュニティの中で生まれているオープンソースならより安心だ。

開発者の毎日の日記などからヒントを得たり,困ったことを日記に書いていたらだれかが解決法を提示してくれたりする。これでみんなの開発意欲が倍増して開発スピードが加速する。

オフ会などのイベントもたてやすく,リアルとオンライン両方でのコミュニケーションでコミュニティがさらに活性化する。

以上のように,オープンソースの運営はこの3サイトの運営が理想だが,これをひとりで,あるいは1社で引き受けるのは最初から考えない方がよい。

サイトの運営は信頼できるなかまを徐々に増やして権限を渡していき,共同運営をおこなってより大きな動きにすることをこころがけることだ。ユーザとしても,オープンソースがたった一社によってコントロールされているというのは不安なものだ。信頼できるコア開発者が共同で運営している方が安心だ。しかし,それはメーリングリストで見つけるのはやめた方がよい。

Geeklog日本ユーザ会であるGeeklog Japaneseの場合は,メーリングリストを一切使わず,SNSを使っている。オープンソース開発者たちが,活動を深めていくと,その状況に応じて管理権限を徐々にわたしていき,コミュニティに溶け込んで信頼のおけるなかまだというコンセンサスができあがったら,最後にはサーバの管理権限やサイトのRoot権限まで渡して共同運営をしていく。管理者グループだけが参加するコミュニティもあり,その中でも毎日多くの発言がある。

それぞれの立場で,自発的に記事をアップしたり,開発したり,英語のメーリングリストの内容を紹介したり,実にうまくからみあっている。

なぜこのようにあうんの呼吸でみんなが協力できるのか。それはSNSで毎日24時間,お互いの日記をみたり,プロフィールをみたり,様々なコミュニティでの発言をお互いにチェックしているからだ。メーリングリストだけでそこまでの呼吸は読めないだろう。

メーリングリストでは,通常のビジネスメールほど形式ばることは無く,率直な意見が飛び交うのだが,ともすれば不快感をあたえるメールになる。メールを受け取る側のプロフィールを含め,相手の普段の顔が見えないので,関係が険悪化することもあるだろう。

SNSでは,多くの場合本名や顔,居住している都道府県,さらにどんなホームページを運営して,なにを仕事にしているかなど,かなりの確率で個人情報をお互いに公開している。また,毎日の日記でそのひととなりが理解できるのも安心だ。

テキストだけのメールに対して,総合的な背景をもった情報になることで,深みのあるコミュニケーションが生まれる。

メーリングリストでRoot権限まで渡せる信頼のおけるネットワークを構築するのは無理だといってよいが,SNSならこのように可能性は十分ある。信頼できる開発者を見つけるのに,SNSは最適だ。徐々にコア開発者を増やして開発やプロジェクトの共同運営を計っていくことでひとりひとりの負担が下がり,全体としてはより大きな盛り上がりとなるコミュニティができあがっていくというものだ。

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