[みんなのお題]CNETはオープンソースWikiと検索サイトを提供すべきか

  • 2007/12/03 05:28 JST

オープンソースは日本ではまだまだ一部の開発者や企業のボランティアレベルで支えられており,十分にビジネスになっているとはいえない。

ただ,オープンソースが流通している商用システムを凌駕するほどに高度なソフトウェアに成長したとき,一挙に商用システムはオープンソースに置き換えられて,オープンソースが間違いなくビジネスになるときを迎えるはずだ。

しかしながらオープンソースがそこまで成長するときまでボランティアで下支えができるのか。今,そこが一番問われている。

ヨーロッパでは非常に合理的なオープンソースが支持されて既にビジネスが成り立っているようだが,日本ではマルチバイト対応のための開発や携帯への対応,その他細やかな対応をしなくては日本で十分なソフトウェアと認知されにくい。つまりオープンソースの日本語化へのハードルが思った以上に高いのだ。

そこまでの開発を日本ユーザ会が担えるのか。日本ユーザ会が,本家へコミットして本家が動いてくれるのか。そのあたりが大きなネックになりそうだ。本家へコミットできない,あるいは日本の希望を聞いてくれないオープンソースはいくら性能が良くても実際には利用できない。

一方,日本におけるオープンソースの普及のためのイベントやサイト,開発サポート環境も成熟しているとはまだまだいえない。

LinuxWorld Expo

株式会社IDGジャパン主催のLinuxWorld Expoでは,複数の企業がスポンサーになってオープン・アップ・OSSや,.orgパビリオンなどが開催されている。一番ビジネス志向の高いイベントだと思われるが,オープンソースがイベントの中の一部分という扱いなのにはまだまだの感がぬぐえない。

オープンソースカンファレンスOSPN SNS

OSPNは株式会社びぎねっとという一企業が支えており,全国で毎年6~7回オープンソースカンファレンスを開催しブース出展とセミナーを開催している。参加者が最も多いが,ボランティアの色が根強くビジネス志向のオープンソースは参加を手控え気味だ。11月になってOSPN運営グループはSNSをリニューアルしてオープンソースSNSとしてOSCとは独立してSNSを開設してオープンソース同士の交流の場を提供しはじめた。

関西オープンソース

関西オープンソースは関西オープンフォーラムが主催しており,実行委員長は大阪市立大学の教員だ。大阪で年一回開かれている。しっかりとしたボランティア組織と公的機関が連携した良いイベントだ。東京でも開いて欲しいものだがそれは望めないようだ。

Geeklogユーザ会を運営していても感じるが,関西はボランティアの動きが非常にしっかりして実際に機能するが,東京ではどうしてもビジネス志向になり,ボランティア組織をつくりにくい土壌になっているように思う。東京ではビジネスが非常に忙しくボランティアまで時間が取れない状況なのだろう。関西では残念ながらビジネスをしたくてもすぐにはできない背景があるので,ビジネス展開の準備やネットワークを広げる意味で,まずはボランティアからはじめてみる,そのうちボランティアに目覚めてたのしい数々のコミュニティに参加していくということになりやすいのではないかと推測している。

その他,オープンソース単独のイベントもあるが,ビジネス志向のオープンソースイベントが現在まだ十分に提供されているとはいえないだろう。

Google Summer Codeによる開発支援

GoogleはGoogle Summer Codeプロジェクトを提供して多くのオープンソースが参加している。Geeklogは今年も参加しており,このプロジェクトのおかげで多くの開発が行われて次期バージョンにてリリースされる。

Wikiや検索サイトの充実

どんなオープンソースがあって,どんなユーザ会が組織されているのか,なかなか検索しにくい。Wikipediaにも情報は不十分で十分に情報が集約されているとはいえない。例えばオープンソースという項目でさえ,先日この項目に多くのオープンソースが抜けていたため一挙に追加したが,よく知られたオープンソースでさえまだまだ掲載から漏れているようだ。

個々のオープンソースを様々な角度から検索するための検索システムやWikiをOSPNが担っても良いと思うが,たとえばCNETといったビジネスの場に直結したサイト内で展開できるのであれば,それがオープンソースをビジネス化するための近道になるのかもしれない。

ベンダロックインビジネスはオープンソースに足元をすくわれる

  • 2007/11/30 17:25 JST

ベンダロックインで縛っていく従来型のビジネスは遠からずオープンソースに足元をすくわれるだろう。なぜなら,ベンダロックインで縛られたほうは,なんとかこの呪縛から逃れようといろいろ模索するからだ。そんなとき,現在のシステムがオープンソースでもっと便利で高機能なものに置き換わるということを知ったら,すぐにでもシステムをオープンソースに置き換えていく可能性があるのだ。

年間数千万円もサイト運営にかけているが,何層にも下受けに出されているため要求がストレートに開発会社に伝わらない。要求してもなかなか変更に応じてもらえない。Geeklogを実際に使ってみて直感的な操作と高機能なところに驚いた。今のシステムをすっかりGeeklogに変えたい。実はきょう,そんな商談があった。

日本の企業はどこが責任を取ってくれるのかそればかりを気にして,どこも責任を取ってくれそうに無いオープンソースを最初からよく知ろうともしないで敬遠するので,オープンソースビジネスはなかなか大変だなと感じていたのだが,もし企業の担当者が質の高いオープンソースに出会って本当にその機能を知ったら簡単に今のシステムを置き換えていく可能性は十分にあるわけだ。

逆に,その大手ベンダーや,そこから受注して中間マージンを得ている会社,そして最後に受託している開発会社は,突然仕事を一挙に失うことになるわけで,それは当事者にとっては非常に恐ろしいことだ。結局顧客満足のために働いてこなかった報いであり,いつかは訪れる結果なのだが,人事ながら心配だ。

オープンソースはカスタマイズ業務を受注し,カスタマイズした開発部分は再びソースやドキュメントを公開して共有資産にする。オープンソースはそうやってますます強く進化していく。強いオープンソースならビジネスになる。さらに利用者や開発者は増え,徐々にオープンソースでビジネスをする人口が増えていくことだろう。

オープンソースならスキルさえあればSOHOも十分可能だ。なぜなら大手の会社が提供している商用のシステムより,機能でも価格でもはるかに優位なオープンソースなら,企業規模で負けていようとも十分勝負になるからだ。

※ベンダロックインとは,ある特定の会社がユーザーを自社システムで囲い込むこと。根幹のシステムを特定のベンダーのシステムにしてしまえば,あらゆるカスタマイズ開発やメンテナンスなどはベンダーのいいなりにならざるを得ない状態に陥る。できるだけ他社が入り込まないよう,分かりにくい仕様にしたり,特殊なプログラムを使う悪質な事例も少なくない。

オープンソースがドイツで盛んな理由

  • 2007/11/28 11:49 JST

OpenOffice.orgがドイツ、Geeklogもドイツ…。オープンソースのプロジェクトリーダがドイツ人の比率はかなり高いのではないか。

ドイツではゴミの分別収集も徹底するなど、合理主義、省エネルギーといった理念はどの国よりも高いように思うが、そういう国民性が反映しているのかもしれない。

オープンソースは、非常に合理的な開発プロジェクトだ。だれもが関わることができてだれもが自由に利用できる。開発した資産はかならず公開されてみんなのものになるので、重複してあちこちで無駄に開発することが無い。開発資産は世界中の利用者に引き継がれる。

Geeklogのあるドイツ人コア開発者に、オープンソースでどうやってビジネスにしているのかを簡単にメールで聞いてみた。ドイツでは、開発会社がソフトウェアを開発したらそれをオープンソースとしてリリースし、サポートすることで利益を得るのだそうだ。日本ではまだまだほんの一部の企業の動きであり、大きな動きになっているとは言い難い。

オープンソースとして世界中のひとたちに利用してもらうためには、多言語化だけでなく、関数の前置子の取り決めやソースファイル名、ディレクトリ構成、カスタマイズ手法の提示、汎用的な機能追加手法の提供など、バージョンアップを継続しても、様々なカスタマイズを行っても、ソフトウェアの内部がゴチャゴチャにならないようにあらかじめ設計しておく必要がある。公開するからには恥ずかしくないソースでなければならないし、ソースコードがバージョンアップに際し、どのように修正されたかドキュメントも必須だ。

このように、公開することでプログラムがよりきれいになり、整理され、完成度が上がっていくものだ。
日本でも、もっと多くの企業がオープンソース理念に賛同してソフトェアを公開し、サポートを主体にビジネスを行っていくようになれば、大企業だけでなく、SOHOのような小規模事業者でも能力次第でサポートビジネスが各所で展開されていくのではないだろうか。

また、そうなれば、同じようなソフトウェア、機能が、同時に複数の会社で開発するのではなく、より高機能なオープンソースをさらに高機能にしていくので、開発人材をより有効に配置できるはずだ。

オープンソースをリリースする企業としては、リリースすることでより多くのひとたちに利用され、開発費用を出すことなく、無尽蔵に存在する世界中の開発者が勝手にどんどん機能をアップしてくれるわけで、永遠に次々とバージョンアップしていくソフトウェアをしかもそのオープンソースの配布元としてクライアントに提供できる。将来を見越した、近江商人に受け継がれる理念である三方よしをそのまま実現することにもなる。ちなみに、三方よしとは、売り手よし ・ 買い手よし ・ 世間よし。

さらにもうひとつ言いたい。日本ではかたくなに開発したら開発ドキュメントを求める会社がまだまだ多い。が、せっかく納品されたドキュメントの紙の山は、実際には活用されること無く死蔵される。開発と同じくらい大きな労力が必要とされるにも関わらず、だ。現状の開発スピードに対応するには、ドキュメントなどを一々揃えている暇は無いだろう。オープンソースにすると、ドキュメント化しなくても自然にだれもが見やすく開発しやすい設計を最初から行うことになるし、オープンソースに関する書籍などもすでに充実している場合も多い。できるだけオープンソースを利用して、ドキュメントの省力化を図って欲しい。そして開発したらオープンソースとしてリリースして欲しい。

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